My Precious Life

猫とロカボと筋トレと。たまにスピリチュアル、ヨガや美容について。

天国に旅立ったネコと死者の声 vol.3

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私は飼い主として失格だったのだろうか?

 

ベッドで横たえたまだほんのり体温の残っている猫を、なぜか大急ぎで、ふかふかの毛布を敷き詰めたお気に入りの段ボールベッドに移した。あの時、なぜあんなに慌てていたのだろう……早くしないと死後硬直が始まってしまう、そう思ったのかもしれない。

 

開いたままの目や口を閉じさせ、全身をきれいに拭いて、身体をそっと持ち上げてみた。毎日欠かさずブラッシングしていたので毛並みは見事なくらいフッサフサでツヤツヤだった。もう、本当に死んでるなんてウソみたいだった。何回も何回も「レオさん」と呼びかけた。もしかしたら「にゃあ!」なんて、ひょっこり目を覚ますんじゃないか、そんな一縷の望みを託して。でもやっぱりレオさんは目を覚ますことなく、段ボールベッドの上でまあるくちんまり、眠るように横たわっていた。

 

兆候はあったのかもしれない……けど、私は全く気付かなかった。その日の朝だって、大好きな「モンプチ輝きサポート15歳高齢ネコ用」というご飯をしっかり食べていた。ペルシャ、とくにチンチラは、鼻ぺちゃでご飯をうまく食べられないので、お皿の隅っこに寄ってしまったフードは手のひらに載せて食べさせてあげるのだが、その朝も例外なく完食していた。

 

ただ、出掛けるときにひとつだけ普段とは違う様子だったんだ。それは、いつもなら籐のソファの背もたれ部分に乗っかって、香箱で外を見るように座っているのに、その日に限って、前足を揃えてきちんとお座りして私を見上げていたのだ。

 

「ん?どうしたの??おかあにゃん、早く帰ってくるからね?」

 

今思えば、そう言って両手で猫の顔を包むようにナデナデしたのが最期だったんだな……。ここ最近は寝てばかりで、レオさんもおじいちゃんになったな~、なんて思っていたけど、あれがサヨナラの合図だったのかもしれない。

 

次の日、私は母の入院先にお見舞いに行く予定だった。が、急遽予定を変更して、レオさんの葬儀となった。亡くなったその日、ネットで「ペット 葬儀」と検索して、広告でも何でもいいので一番上に出ていたところに電話をした。最初のところは明らかに電話取次会社の女性の声で「折り返しご連絡します」とのことだった。「少しお時間いただいてもよろしいですか?」と言われたので、とりあえず「はい」と答えた。

 

そのまま電話を待っているのもアレなので、次に表示されていた会社に電話をしたら、ここも女性の声でいきなり「犬ですか?猫ですか?」と言われた。(あ、ここはダメだ)と直感したので、「すみません、やっぱり大丈夫です」と言って即座に電話を切った。

 

3度目の正直とはよく言ったもので、最終的には次に電話をしたところにお願いすることになるのだが、電話口に出た男性は落ち着いたとても優しい声をしていた。

 

「そうですか、お気の毒でしたね……猫ちゃんはいつ亡くなったんですか?」

 

張りつめていた糸が切れたというか、レオさんの死が現実のものになった瞬間というか、男性の声を聞いた途端に涙があふれて止まらなくなってしまった。

 

「レ、レオさんは、ヒック……きょう仕事から帰ってきたら、ヒッ…ベッドの上で、ヒッ…亡くなってい…て…ヒック」

 

子どものように泣きながら、なんとか状況を伝えようと必死で声を絞り出した。男性は(後に名刺をいただいたら、私の大好きな松ちゃんと同じ、マツモトヒトシさんというお名前だった!)多分こういうシチュエーションに慣れていらっしゃるのか、すごく温かく、かつ適切なアドバイスをくれた。その夜は本当にマツモトヒトシさんに救われた気がした。なお、一番最初に電話したところは、夜中の11時ごろに折り返しかかってきたのだが、そういうわけで丁重にお断りした。これもやっぱり縁、なのかもな。

 

お別れの朝、10時半きっちりにマンションのインターホンが鳴った。電話の声と同じマツモトヒトシさんがレオさんをお迎えに来てくれた。いよいよ、レオさんが天国に旅立つ日がやって来た。